先日、管理職直前の方向けに研修をしました。
終了後、受講者の一人がぽつり。
「先生、この研修は僕たちだけじゃなくて、上層部にも受けてもらいたい内容です」こういう声、実はよく出ます。
とくに研修機会が少ない企業では、様々な役職で
「上司にも受けてほしい」
「トップも学ぶべきだ」
という話がかなりの頻度で上がります。
(菅生の体験から)
一体社内で何が起きているのでしょうか。
大抵の場合、上下のコミュニケーションがすれ違っています。
トップと現場は、見えている景色が違います。
トップは「これくらい言えば伝わる」と思っていても、現場には要点が届ききらない。
しかも部下の頭の中は覗けませんから、
わかっているはず・知っているはず・伝えたつもりのまま、
小さなズレが積み重なります。(誰も悪くないのに、もったいないところです。)
ここで、「社員が変わればうまくいく」という前提があると管理職・社員向けの研修だけに力を入れがちです。
社員の能力向上はもちろん大事なのです。
しかし、組織強化や“今あるリソースで更なる成果を出す”ことが目的の研修
(例えば、目標管理、深いコミュニケーション、信頼関係構築、チームビルディングなど)では、
社員から「僕たちだけでなく、上の層も一緒に」と声が上がるのは自然な反応です。
私も全く同感です。
大企業では、経営層も研修やコーチングをなどを受け、常にトップの意志決定の精度を高め続けています。
しかしもしも、あなたが社員のこうした声に少し戸惑いがあるのであれば、それは社員や組織が変わりたい、変わろうとしているサインだと受け止めてみるのはどうでしょうか。
まずは、現場からの発信を素直に受け止める土壌があるかどうか、耳を澄ませてみてくださいね。

そして、管理職・社員向けの研修だけでなく、
管理職を指導・育成する側(経営層)も同じようにアップデートすることが大切です。
経営層~管理職・一般社員まで、まずは会社全体の「基準」がそろうと、
会社全体の日々の意思決定と実行、会議、採用・評価の精度が一段上がるからです。
経営層のアップデート方法は、研修、コーチング、コンサルティングなど多々ありますが、経営層だけ特別な知識を得ても、会社全体として歩みを合わせることができないため、
まずは、全社員が共通言語として持つべき必要な知識や考え方のベースを揃える、互いの理解を深める、見ている方向を合わせる、ということが非常に重要です。
経営者・上層部の方も共に、知識・考え方をアップデートし、行動を加速させていくことができると会社は大きく変化しはじめます。
そして、人はいくつになっても、誰かからの関わりによって、知識以外の様々な能力を
向上させることができるという研究結果も出ています。
経営層の更なるレベルアップが会社を成長させる最大のレバレッジです。
経営哲学でよく言われるように、まさに「組織はトップの器以上にはならない」のです。
(文:菅生としこ)