
言われたことはやるのに、自分からは動かない。
そんな場面に、もどかしさを感じている経営者の方は多いと思います。
もちろん、社員の側に課題がまったくないとは言いません。
けれど実際には、本人のやる気より先に、見直したいことがあります。
それは、組織の設計です。
やる気の問題にすると、打ち手が弱くなる
社員が動かないとき、
「当事者意識が足りない」
「もっと主体性を持ってほしい」
と思うのは自然なことです。
ですが、原因を“やる気”だけにしてしまうと、打ち手が弱くなります。
なぜなら、やる気は見えにくく、外から変えにくいからです。
一方で、組織の設計は変えられます。
- 何を大事にしてほしいのか
- どこまで任せるのか
- 失敗したときにどう扱うのか
- 日々どんな言葉をかけているのか
こうしたことは、すべて社員の動きやすさに影響します。
つまり、社員が動かないときは、
本人を見る前に、動ける設計になっているかを見たほうが、打ち手が見えやすいのです。
まじめな会社ほど、止まりやすいことがある
ここは意外に感じるかもしれません。
実は、まじめで、いい人が多い会社ほど、社員が自分から動きにくいことがあります。
なぜなら、誠実な人ほど、
「ここまでやっていいのだろうか」
「勝手に進めてズレたらまずい」
「確認せずに動いて怒られたくない」
と慎重になるからです。
これは、やる気がないのではありません。
むしろ、会社のことを考えているからこそ、勝手な判断を避けているのです。
だからこそ必要なのは、
「もっと積極的に」と気持ちを求めることではなく、
安心して動ける状態をつくることです。
社員が動きやすくなる会社は、ここが違う
社員が自ら動きやすい会社には、共通点があります。
1. 何を大事にするかが分かる
社員は、「自由にやっていい」と言われても、実は動きやすくなりません。
自由すぎると、かえって迷うからです。
必要なのは、
何を基準に考えればよいかが分かることです。
たとえば、
- この仕事の目的は何か
- 今、会社が特に大事にしていることは何か
- この部署に期待している役割は何か
ここがはっきりすると、社員は判断しやすくなります。
2. 任せる範囲がはっきりしている
「もっと考えて動いて」と言いながら、何でも確認が必要。
これでは、部下は動けません。
自分で決めてよいこと。
相談してほしいこと。
最後は上司が判断すること。
この線引きがあるだけで、動きやすさは変わります。
任せるとは、丸投げではなく、
判断できる範囲を渡すことです。
3. 振り返る時間がある
人は、一度任せただけでは育ちません。
やってみたことを振り返り、
「何がよかったか」
「次はどうするか」
を一緒に整理していくことで、判断力が育っていきます。
逆に、任せっぱなし、やらせっぱなしだと、経験が力になりにくいのです。
忙しい会社ほど、この時間が抜けやすいのですが、
短くてもあるかないかで差が出ます。
社員を責める前に、見直したいこと
社員が動かないと、つい本人に原因を探したくなります。
ですが、本当に見直すべきは、
その人の性格や意欲ではなく、
その人が動ける環境になっているかかもしれません。
- 目的は伝わっているか
- 判断の基準はあるか
- 任せる範囲は明確か
- 失敗しにくい空気があるか
- 振り返る時間が取れているか
このあたりを整えるだけでも、組織の動き方は変わってきます。
まずは小さく変えればいい
大きな制度を変えなくても、できることはあります。
たとえば、
- 会議の最後に「各自が決めて進めること」を確認する
- 上司が先に答えを言わず、まず相手の考えを聞く
- 週に10分だけ振り返りの時間をつくる
こうした小さな変化でも、社員の動きやすさは変わります。
社員が動かないのは、
能力が低いからでも、やる気が足りないからでもなく、
まだ動きやすい形になっていないだけかもしれません。
そう考えると、組織づくりの見え方は変わってきます。
まとめ
社員が動かないとき、
本人の問題として見ると、責める方向に行きやすくなります。
けれど、組織の設計として見ると、変えられることが見えてきます。
人を動かす前に、
人が動きやすくなる環境を整える。
その視点が、組織を変える第一歩になるのではないでしょうか。
