「これ、頼むより自分でやった方が早いな」
管理職の方からよく聞く一言です。部下に頼めば説明する時間がかかる、やり直しが発生するかもしれない。だったら自分でやってしまおう。忙しい現場ほど、そう考えるのは自然なことですよね。その気持ち、痛いほどわかります。
けれど、この判断を積み重ねてきた結果、気づけば自分だけが忙しく、チームの誰も成長していない。そんな状態に心当たりはないでしょうか。
「自分でやった方が早い」は、本当にそうなのか
たしかに、今この瞬間だけを見れば、自分でやった方が早いのは事実です。説明する手間も、待つ時間も、やり直しのリスクもありません。
ただし、この「早さ」は今日一日分の早さでしかありません。同じ仕事を、来月も、来年も、自分がやり続けるつもりでしょうか。頼めば早く終わる仕事のはずが、いつまで経っても「自分の仕事」から抜けないのだとしたら、それは生産性が上がっているとは言えません。
目の前の効率と、組織全体の生産性は別物
生産性というと、一つひとつの作業をどれだけ速くこなすか、という話になりがちです。しかし本当に見るべきは、チーム全体でどれだけの成果を生み出せているか、です。
管理職が抱え込んでいる仕事は、その人にしかできない仕事ではなく、多くの場合「まだ誰もやったことがない仕事」です。任せないままでいると、できる人が一人のまま増えていきません。目の前の効率を優先した結果、組織全体の生産性は頭打ちのまま、ということが起こります。
「教える時間がもったいない」という思い込みの正体
任せない理由として、「教える時間がもったいない」という声もよく聞きます。任せるのは、正直大変ですよね。この思い込みには、一つ見落としがあります。教える時間は、一度きりのコストではないということです。
最初は確かに時間がかかります。けれど、一度やり方を覚えた部下は、次からは自分の力でその仕事をこなせるようになります。教える時間は投資であり、その回収は二回目以降に始まります。「もったいない」のは、教える時間ではなく、いつまでも投資をしないまま同じ仕事を一人で抱え続けることの方かもしれませんね。
任せることで、経験学習が起こる
人は、やってみて、振り返って、次はこうしようと考えることで力をつけていきます。任せるということは、部下にこの経験学習のサイクルを回すチャンスを渡すことでもあります。
最初からうまくいく必要はありません。むしろ、うまくいかなかったときにこそ、「どうすればよかったか」を一緒に振り返る機会が生まれます。任せずに自分でやってしまうと、この機会そのものが失われてしまいます。手放すのは怖いものですが、その先にチームの育つ余地があるんですよね。
まずは、小さく手放すことから
いきなり大きな仕事を任せる必要はありません。まずは、影響範囲が小さく、多少やり直しがあっても困らない仕事から手放してみることをおすすめします。
任せるときに大事なのは、「何をゴールにするか」を先に伝えておくことです。ゴールさえ共有できていれば、途中のやり方が自分と違っていても、口を出さずに見守ることができますよね。
まとめ
「自分でやった方が早い」は、今日一日を見れば正しい判断です。けれど、それを積み重ねた先に待っているのは、自分だけが忙しく、チームの生産性は変わらないという状態です。
生産性を本当に上げたいなら、やり方を工夫する前に、まず何を手放せるかを考えてみませんか。
今日の一歩 今抱えている仕事の中から一つだけ、「これは任せられるかもしれない」というものを選んでみてください。そして、任せる前に「何をゴールにするか」を一言メモしてみましょう。
