
「今日も暑いですね」
「いや、ほんと、毎日暑いですね」
この夏、何度この言葉を交わしたでしょうか。エレベーターで、朝礼で、取引先の玄関先で。おそらく日本中で一番たくさん使われている挨拶が、この「暑いですね」ではないかと思います。
今日はこの、あまりにも当たり前な「暑いですね」を入口に、菅生が組織開発の現場でいつも使っている見方を、肩の力を抜いてご紹介してみます。
同じ「暑いですね」でも、思っていることは人それぞれ
まず、こんな場面を思い浮かべてみてください。
夏が来ると心が躍る!という夏が大好きな人にとって、「暑いですね」は、どこかうれしさのにじんだ言葉です。「待ってました!」という気持ちが、うっすら混ざっていたりします。反対に、暑さが苦手な人にとっては、「暑いですね」はもう、ため息そのもの。同じ言葉なのに、中身はまるで反対です。
だから、夏が好きな人が良かれと思って「いい季節になりましたね!」と声をかけても、苦手な人とは、どうも話がかみ合いません。同じ「暑い」を見ているはずなのに、なぜか通じ合えない。こんな経験、ありませんか。
実はこれ、「氷山モデル」なんです
このかみ合わなさを、菅生はいつも「氷山」の絵で考えています。
海に浮かぶ氷山は、水面の上に見えている部分が、全体のほんの一角。その何倍もの大きな塊が、水面下に隠れています。人の言葉も、これとよく似ています。口に出た「暑いですね」は水面の上のほんの一角で、その下には、その人ならではの大きな塊が沈んでいる。ざっくり言うと、これが「氷山モデル」です。
覚えていただきたいのは、たった一つだけ。見えている言葉が、その人の全部ではない。 それだけです。難しく考えなくて大丈夫。「口に出たことの下には、まだ何かある」と思っておく。ただそれだけの、ゆるい心構えです。
では、「暑いですね」の下には何が沈んでいる?
では試しに、「暑いですね」の水面下を、のぞいてみましょう。こんなものが沈んでいます。
- その人が、そもそも暑さが好きか、苦手か。
- 今年だけ暑いと思っているのか、「年々暑くなっているな」と感じているのか。
- 毎日つらいのか、「暑い日が続くと決まって調子が落ちる」といったパターンを抱えているのか。
同じ「暑いですね」でも、今日の軽い感想なのか、「この10年で本当に変わったな」という実感なのかで、中身はずいぶん違います。同じことは、職場のちょっとした一言にも言えます。「忙しいですね」の下に、何が沈んでいるか。想像してみると、ちょっと面白いと思いませんか。
見えている景色が変わることが、学習です
ここまで読んでくださったあなたは、もう次に「暑いですね」と言うとき、少しだけ景色が変わっているかもしれません。ただの挨拶だった一言が、「この人は、どっち派だろう?」と、相手をのぞく小さな窓に見えてくる。
私は、この「見えている景色がちょっと変わること」こそ、学習だと思っています。難しい知識を覚えることだけが学びではありません。いつもの景色が、昨日までと違って見えるようになる。それだけで、じゅうぶん学習であり、成長です。
そして私は、これが面白いなぁと思うのです。「暑いですね」の一言でさえ、見方ひとつでこんなに広がる。世界は、のぞこうと思えば、いくらでも深いのですから。
まとめ
「暑いですね」は、氷山の一角。その下には、暑さの好き嫌いや、これまでの経験が、そっと沈んでいます。
そして同じ見方は、そのままあなたの職場でも使えます。「最近忙しいなあ」「雰囲気が悪いなあ」——その一言の下に、どんな塊が沈んでいるでしょう。見えていることだけで決めつけず、ちょっと水面下をのぞいてみる。それだけで、見える景色は変わってきます。
まずは気軽に。氷山モデル、覚えておいて損はありませんよ。
今日の一歩
次にどなたかと「暑いですね」と言い合ったら、心の中でそっと一つだけ想像してみてください。「この人は、夏が好き派かな、苦手派かな」と。当たっているかどうかは、気にしなくて大丈夫。のぞいてみる、その一瞬で楽しめますよ。
