先日、美容室で興味深い経験をしました。
スタイリストが新しいブラシを紹介してくれたのですが、髪に驚くほどの艶が出て、頭皮も柔らかくなり、肌の艶までよくなると言うのです。
実際に使ってみると、確かに効果は抜群でした。
「これは素晴らしい」と思いつつも、冷静に自分の日常を振り返ってみました。
普段から髪をとかす回数は1日に3回の私。
効果は認めるものの、「本当に効果を感じられるほど使うだろうか?」という現実的な疑問が湧き、結局は購入を見送りました。
この小さな体験は、実は企業経営における新しいものの導入と驚くほど似ています。
新しいものが定着しない理由
企業においても、DXやAIの導入、新しい制度の策定、設備や機器の更新など、常に「新しいもの」を取り入れる機会があります。
しかし、どれほど優れたものであっても、なかなか定着しないことが多いのはなぜでしょうか?
答えは単純です。
「使う構造」が整っていないからです。
私がブラシを買わなかったのは、そのブラシを日常的に使う習慣がなかったから。
同様に、会社に最新のシステムを導入しても、それを活用する時間や習慣、そして文化がなければ、高価な設備投資は宝の持ち腐れになってしまいます。
構造変革なくして本質的変化なし
新しいものを導入する際に最も重要なのは、それを受け入れる「構造」を同時に変えることです。
例えば
- DXシステムを導入するなら、そのシステムを使う時間を業務フローに組み込む
- 新制度を策定するなら、運用する側のマインドセットやスキルを変える研修を実施する
- 新しい機械を入れるなら、それを使いこなせる人材育成の仕組みを整える
つまり、「道具」だけでなく「使い方」と「使う環境」を一緒に変えることが成功への鍵なのです。
小さな成功体験を積み重ねる
変化は一朝一夕には起こりません。
新しいものを導入する際は、小さな成功体験を積み重ねていくことも大切です。
全社一斉導入ではなく、特定の部署や少人数のチームで試験的に運用し、成功事例を作ってから展開するアプローチも有効でしょう。
私たちは「良いもの」に飛びつきがちですが、それを活かす土壌がなければ根付きません。
新しいものを取り入れる際は、それを活かす構造づくりにも力を注ぐべきではないでしょうか。
あなたの会社で最近導入した「新しいもの」、本当に活用されていますか?
もし思ったような効果が出ていないのなら、それを活かす構造を見直してみてはいかがでしょうか。
文:菅生としこ

菅生としこプロフィール
トヨタ自動車出身。組織づくり、人づくりのど真ん中で働いた原体験からはたらくを面白がる達人。
“トヨタの問題解決”を整理体系化し、広く展開。問題解決できる人材開発を行った立役者。
事業の問題解決、人が関わる問題解決、変化成長し続ける組織づくりのための問題解決サポートを得意とする。
問題なくして成長なし!問題があるからオモシロイ!