子どもが学ぶ場所を選びにくい。
その現実に触れたとき、私は、大人の働く場のことも重なって見えました。

友人のお子さんが、高校入学後に不登校になったそうです。
今では珍しいことではありません。
少し休んで、あらためて「やはり高校に通いたい」と思うようになった。
けれど、同じ学校に戻るのは難しく、別の高校に通いたいと思っても、そこには別の壁がある。

小中学校は、住まいに応じて就学する学校が決まるのが一般的です。
ただし、事情があれば変更できる制度はあります。
それでも、実際には保護者や本人にとって、気軽に選び直せるものではありません。

高校になると、さらに簡単ではありません。
入試だけでなく、転入学や編入学の条件、単位の扱い、受入れの可否など、学校ごとの事情が関わってきます。
学びたい気持ちがあっても、すぐに次の一歩を踏み出せるとは限らないのです。

もちろん、学校側にも制度や運営上の事情があります。
ただ、それでも私は、少し立ち止まって考えたくなりました。

学校とは、本来、子どもたちが学び、育ち、自分で選び、自分の足で歩いていく力をつける場のはずです。
そのはずなのに、いざ本人が「学びたい」と思ったときに、その選択がしにくい。
ここには、何とも言えない違和感があります。

そしてこの違和感は、実は大人の働く場にもよく似ています。

いまの日本では、転職そのものは珍しいものではありません。
実際、厚生労働省の調査でも、転職して新たに入職した人は一定数います。
けれど、だからといって、誰もが自由に働く場所を選べているわけではありません。

本当はやりたい仕事がある。
けれど、生活や年齢や家庭の事情を考えると動けない。
遠くへの転勤や長い通勤が難しい。
体調を崩しても、出産や介護があっても、「休むと周りに迷惑をかける」と思いながら働いている。
今の場所がつらくても、簡単には離れられない。

そう考えると、
学校に通う子どもと、働く大人は、まったく別の話ではないのかもしれません。

どちらにも共通しているのは、
本当は力を発揮できる場所があるかもしれないのに、それを自分で選びにくい人がいる
ということです。

人は、どこにいても同じように力を出せるわけではありません。
合う場所もあれば、合わない場所もある。
安心して学べる場所に移れたら、また前を向ける子もいます。
働く場を選び直せたことで、ぐっと力を発揮する大人もいます。

だから私は、
誰もが自分の力を高め、発揮できるように、学べる場、働ける場がもっと整った社会になるといいと思っています。

ただ、その一方で、会社の立場に立てば、
「みんなが自由に離れたり移ったりしたら困る」
という気持ちも当然あります。

だから結論は、
「人をつなぎとめること」ではないのだと思うのです。

本当に大事なのは、
この会社で働きたい
ここなら力を発揮できる
と、自然に思ってもらえる場をつくることです。

選べないから残る会社ではなく、
選べる時代でも選ばれる会社になること。

これは、福利厚生を少し増やせば済む話ではありません。
制度だけ整えればよい話でもありません。

たとえば、

自分の意見を言っても大丈夫だと思えるか。
体調や家庭の事情があっても相談できるか。
無理をし続けないと評価されない空気になっていないか。
この会社で働くことで、自分が成長できると思えるか。
ここで働く意味を、自分の言葉で持てるか。

そうしたことの積み重ねが、
「働きたくなる場」をつくっていくのだと思います。

組織づくりというと、つい「辞めさせない工夫」や「制度設計」の話になりがちです。
でも、その前に考えたいのは、
そもそもこの会社は、人が自分の力を発揮しやすい場になっているだろうか、ということです。

選べない社会は、息苦しい。
学校でも、職場でも、それは同じです。

だからこそ、まずは自社から。
ここでなら働きたい。
ここでなら成長したい。
ここでなら、自分の足で前に進める。
そう思える場を、ひとつずつ増やしていく。

それが、働きやすい会社をつくるということだと思います。
そしてその先に、子どもも大人も、自分の力を発揮しやすい社会が少しずつ近づいていくのではないでしょうか。

今日、ひとつだけ見直すなら、
「この会社に残る理由」ではなく、
「この会社で働きたいと思える理由が、社員の側から見て本当にあるか」
を問い直してみてください。

選ばれる場は、偶然できません。
日々の関わり方と、組織のあり方の中から、少しずつつくられていくのだと思います。

そのための取り組みを小さなことから始めてみませんか。

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